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相続お役立ちコラム

相続の場面において問題になるケースが多いのが、『特別受益』です。 特別受益とは、生前に被相続人(亡くなった人)から贈与を受けて特別な利益を得ていた人がいる場合の、その受けた利益のことです。
今回は特別受益の対象となった不動産が、遺産分割の際にどのように評価されるかを説明します。 なお、ここでは、特別受益にあたる贈与と当たらない贈与についての区別については省きます。

特別受益とはどのような制度か?

一般的に、相続人が被相続人から不動産(以下、特別受益の対象となった不動産を『特別受益不動産』と呼びます)の贈与を受けた場合、当該贈与は特別受益と評価されると考えられます。
民法903条1項には『共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。』と定めています。
この規定の趣旨は、特別に贈与を受けていた者(以下『特別受益者』といいます)がいる場合には、これを考慮して相続分を算定することが相続人間の公平にかない、被相続人の意思にも合致するという点にあります。
特別受益者がいる場合は原則として、被相続人が死亡当時に有していた財産(相続財産)に、特別受益を加えた財産をみなし相続財産として扱い(特別受益の持戻し)、遺産分割を行います。

不動産の生前贈与の評価方法とは?

不動産の場合は、時期や状態によってその価値が変わります。
たとえば、同じ広さの同じ土地でも、30年前の土地の価格と現在の土地の価格は異なります。 特別受益者がいる場合、本人は特別受益不動産を安く評価してもらいたいと考えるでしょう。
一方、他の相続人からすれば特別受益不動産を高く評価してもらいたいと考えるでしょう。
では、実際にはどのように評価されるのでしょうか。

不動産の生前贈与の評価は、被相続人の相続開始時の価値を基に評価する『相続開始時説』が通説といわれています。
実際、実務においても相続開始時説に従って遺産分割が行われることが多いのです。
たとえば、特別受益を受けた当時、特別受益不動産の価値が1,000万円であったとしても、相続開始時に2,000万円の価値があれば、2,000万円相当の特別受益を受けたと評価して遺産分割が行われます。

では、次の場合はどうなるでしょうか。

(1)売却してしまった場合
たとえば、すでに特別受益者が特別受益不動産を売却してしまっていた場合はどのように特別受益を評価することになるでしょう。
実務的には、特別受益不動産が特別受益者の下にあるままの状態とみなして、相続開始時の価値を基に評価して遺産分割を行います。
なお、特別受益不動産の売却のほか、修繕や特別受益者の行為によって特別受益不動産が滅失した場合も同じ扱いとなります。

(2)負担付贈与を受けた場合
特別受益を受けた当時2,000万円の価値のある特別受益不動産を、1,000万円の債務を負うことを条件に譲り受けたとします。
そして相続開始時の特別受益不動産の価値が3,000万円であった場合、どのように特別受益を評価すればよいのでしょうか。
特別受益を受けた当時を基準として、特別受益不動産の価値から1,000万円の債務を差し引いて、その残余価値を現在価値に引き直すのでしょうか。
それとも特別受益不動産の相続開始時の価値から1,000万円の債務(金銭価値)を現在価値に引き直した金額を控除して、その差額を特別受益と評価するのでしょうか。
実務的には後者の考え方で遺産分割を行うことが多いと思われます。
具体的には、特別受益不動産を3,000万円と評価し、1,000万円の債務を貨幣価値の変動(物価指数等を参考)を考慮してその差額を特別受益とします。

特別受益の持戻し免除の意思表示とは?

被相続人が持戻しを希望しない意思表示をした場合に、持戻しを考慮しないで相続財産を計算することをいいます(民法903条3項)。
持戻し免除の意思表示の方法に決まった方式はありませんが、言った・言わないの争いを生じさせないために、被相続人が遺言に「持戻しは必要ない」と記載しておくと、他の相続人はそれに従う必要があります。
よって、他の相続人は「○○には特別受益があるから相続分を減らすべきだ」と主張できなくなります。ただし、遺留分の制限は受けます。

不動産の特別受益は、遺産分割の実務でも度々問題となりますが、相続開始時の価値を基準とすることを覚えておくとよいでしょう。

 

※本記事の記載内容は、2020年5月現在の法令・情報等に基づいています。

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