令和4年4月1日から成年年齢が18歳になり、「契約」「資格の取得」など若者の生活をめぐるさまざまなルールに影響を及ぼしています。今回は、その中でも、成年年齢引き下げに伴う相続税・贈与税への影響について紹介します。
相続税は亡くなった人から財産を引き継いだときにかかる税金、贈与税は個人から財産をもらったときにかかる税金です。相続税や贈与税にも、「20歳」「未成年者」を対象にしている仕組みがいくつかあります。
(1)未成年者控除(未成年者の税額控除)
未成年者控除は、相続で財産を引き継ぐ人が未成年の場合、相続税を差し引くことができる制度です。財産を引き継ぐ未成年者が満20歳になるまでの年数1年につき10万円を相続税の金額から差し引くことができます。しかし、令和4年4月以降は満20歳が「満18歳」に変わりますので、控除額が2年分(20万円)少なくなることになります。実質的に負担が増える改正といえるでしょう。
(2)相続時精算課税制度
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母から20歳以上の子や孫が財産をもらったときに利用できる贈与税の特例制度です。相続時精算課税を利用すると、累計2,500万円までは贈与税が非課税になります。現行法上、基本的に年間110万円以下の贈与であれば贈与税がかからない(暦年課税制度)ですが、相続時精算課税を利用することで、一度に多くの財産を贈与できます。
また、暦年課税の税率は超過累進税率といって段階的に上昇(最大55%)しますが、相続時精算課税制度の税率は、2,500万円を超えた部分に一律20%の課税となるので、少ない税負担で高額贈与を行うことも可能です。
令和4年4月以降は、相続時精算課税制度を選ぶことができる年齢が「18歳以上」となります。つまり、より早い段階で相続時精算課税制度が利用でき、若い世代が財産を有効活用できるという点では、メリットのある改正といえます。
(3)贈与税の税率の特例
贈与税の税率には「一般税率」と、それよりも税率の低い「特例税率」の2種類があります。特例税率とは、父母・祖父母が20歳以上の子や孫に対して行った贈与について適用されます。この特例税率を受け取れる年齢も、「20歳以上」から「18歳以上」と変更されますので、これまでよりも2年早く低い税率の適用ができるようになります。
(4)住宅取得資金贈与の特例
結婚・子育て資金と同様、父母・祖父母から住宅を新築・取得・増改築するためのお金の贈与を受ける場合、500万円まで(一定の要件を満たす「良質な住宅」の場合は1,000万円まで)非課税で贈与が受けられます。対象は「20歳以上の子・孫」でしたが、令和4月以降は「18歳以上の子・孫」となります。
※現行法上、(4)の特例が利用できるのは、令和8年3月31日までとなっています。
上記の通り、各種特例適用年齢の引下げによるメリットもありますので、ご自身に照らし合わせ、ご検討してみてはいかがでしょうか。