相続人調査
ここでは、相続において最も重要な相続人調査について説明いたします。
この相続人調査・戸籍調査を怠ると、相続手続きが滞るばかりでなく、後々思いもよらない相続人が発覚し遺産分割協議のやり直しやトラブルに発展することもあります。
したがって、相続人調査はとても重要なポイントとなります。
誰が相続人なのかを調べるためには、亡くなった方の「戸籍謄本」「除籍謄本」「改製原戸籍」等を出生から死亡まですべて取得します。
戸籍の収集は、相続人の確定以外にも預貯金の解約、株式や自動車の名義変更、不動産の相続登記などの手続きに必要になってきます。
ですから、すべての戸籍謄本が揃っていなければ、相続を開始することができないほか、預金を下ろすこともできません。
実は出生から戸籍の取得をするため、とても労力を要する場合があります。
法定相続人が兄弟姉妹で代襲相続が発生しているケースもあり、その場合、全く面識のない方が相続人になる可能性があります。
さらに、生前本籍地を繰り返し移している場合、養子縁組などをしている場合、などは複雑になり戸籍が読みにくくなることもあります。
市区町村役場では年々進んでいるプライバシー保護の観点からすぐに戸籍謄本を取得することが簡単ではなくなっています。
先ほどお話したように、戸籍謄本等の取得は手間が掛かってしまうため、お仕事をされていて平日に時間をとれない方、育児で外出が難しい方には、とても煩雑な手続きとなっています。
もし、複雑な戸籍謄本の手続きにお困りの方がいらっしゃいましたら、当事務所にお気軽にご相談ください。
無料でご相談に応じさせていただきます。
戸籍を収集する
戸籍とは、夫婦と未婚の子供を単位に編成された身分関係を明確にするためのものです。
戸籍を収集する場合は、本籍地のある市区町村役場で手続きを行わなければなりません。
本籍地が遠方にある場合や、都合により出向けないような場合は郵送による申請も可能です。
戸籍を請求できるのは、原則、その戸籍の構成員や直系親族の方などです。
代理人の場合は委任状が必要になります。
収集すべき戸籍には何種類かあります
それでは、相続人を確定するための被相続人の戸籍謄本類とはどんなものでしょう。
戸籍謄本の種類には戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍、戸籍の附票があります。
戸籍謄本
私たちが戸籍と聞いた場合に思い出すのがこの戸籍謄本で、いわゆる現在の戸籍です。
夫婦と子を単位で成り立っており、夫婦のどちらかが筆頭者となります。
もし子が結婚した場合には、新たに子夫婦のどちらかを筆頭者とした戸籍が作られます。
相続人調査において必要となる戸籍のひとつです。
除籍謄本
戸籍に記載されている人が、もし死亡や婚姻などによって戸籍から抜けると、
名前がバツで抹消されていきます。これを除籍といいます。
全員が除籍されて戸籍にだれもいなくなってしまった状態になると、
その戸籍は除籍という呼び名に変わります。この除籍の写しが除籍謄本です。
これも相続人調査で必要な戸籍です。
改製原戸籍
改製原戸籍とは、法令の改正などによって作り変えられる前の戸籍のことをいいます。
なぜ、相続人の調査に作り変えられる前の戸籍である改製原戸籍が必要かといいますと、
改製後の戸籍には、その時に必要な情報しか載っていないからなのです。
戸籍謄本を収集して相続人を確定したとしても、それだけでは不十分なのです。
改製原戸籍を取得しておかないと、相続人であるはずのその他の存在は分からないのです。
この改製原戸籍に相続人が一人でもいた場合、相続人すべての合意が必要な遺産分割協議書は無効となります。
戸籍の附票
戸籍の附票とは、その戸籍が出来たときからの住所変更履歴が記載されたもので、戸籍に記載されている人が引越などをして役所に住所変更をした際、この戸籍の附票に新しい住所が記載されていきます。
戸籍の付票は、住所を確認するために必要とされます。
相続関係図
相続人関係図とは亡くなった方(被相続人)の相続人が誰なのかを図式化したものです。
相続人と被相続人の関係性が可視化されるため、相続に必要な戸籍の収集が効率的になります。
金融機関などでの相続手続きにも利用でき、遺言書の検認を受ける際にも円滑になるため便利です。
相続人関係図作成のポイント
①誰が見ても一目でわかる
⇒相続人関係図は被相続人と相続人の関係性を目に見える形で図式化することに意味があります。
ですから明瞭かつ誰にでもわかるものを作る必要があります。
②登記された住所・氏名が一致
⇒登記されている住所が該当する相続人と一致しているか、相続人の氏名(漢字の表記など)が間違っていないかを確認します。
③戸籍・相続証明書等相続証明書類との関連性がある
⇒関係図は戸籍・相続証明書等、各種証明書類を基に作成する必要があります。
当事務所では相続人関係図の作成サポートも承っております。
相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。
法定相続分と法定相続人
遺言が残されなかった場合は、どんなに特別な事情があったとしても、原則民法により決められた相続人へ亡くなった方(被相続人)の財産が渡ることになります。
以下、誰が相続人になって、どれだけの財産を相続するのかを見ていきましょう。
誰が相続人になるのか?・・・法定相続人
法律(民法)上では、亡くなった人の財産を引き継ぐ人のことを「相続人」として定めています。
このように法で定められた財産の受け取り人のことを法定相続人といいます。
この権利は、民法で定められていて、以下の人が法定相続人になることができます。
①配偶者(夫からみれば妻、妻からみれば夫)
ただし、婚姻関係のない内縁の妻や、愛人には相続権がありません。
②子供(=実子)、養子、内縁の妻や愛人の子供、胎児、あるいは孫、ひ孫
これらの人を直系卑属(ひぞく)といいます。民法では、子供、養子が何人いても、全て法定相続人となります。
③父と母、あるいは、祖父母
直系卑属が誰もいないときに、相続人になることができます。
父と母がいないときは、祖父母が相続人になり、これらの人を直系尊属といいます。
④兄弟姉妹、あるいはその子供
被相続人の直系卑属や直系尊属が、誰もいないときにはじめて相続人となることができます。
以上が法定相続人となることができる人です。
相続割合はどれくらいか?・・・法定相続分
法定相続分とは、法定相続によって相続人に相続される相続財産の割合をいいます。
法定相続分を知ることは、誰にいくらが相続されるのかを知るひとつの目安となります。
遺言書は、亡くなった方の自由意志を反映させるものですが、後々もめないようにするには、作成時にまず参考にされるべきものが法定相続分なのです。
法定相続人の順位または割合
法定相続分は相続人の構成状況によって、以下のとおりと定められています。
ケース1 夫の遺産(1000万)を妻と子供二人で相続
相続人 | 相続配分 | 金額例 |
妻 | 1/2 | 500万 |
子供1 | 妻の残り1/2を均等に分ける | 250万 |
子供2 | 妻の残り1/2を均等に分ける | 250万 |
ケース2 夫の遺産(1200万)を子供がいない嫁と夫側の両親二人で相続
相続人 | 相続配分 | 金額例 |
妻 | 2/3 | 800万 |
夫側の父 | 妻の残り1/3を均等に分ける | 200万 |
夫側の母 | 妻の残り1/3を均等に分ける | 200万 |
法律で定めたとおりの配分でないといけないのか
法律では、法定相続分によって配分が定められています。
しかし、必ず法定相続分どおりの配分でなくとも問題ないケースがあります。
①遺言書がある場合
被相続人の遺言が最優先されます。
ゆえに法定相続分が定められていたとしても,遺言の内容に従い配分します。
②遺産分割協議によって配分を決定した場合
相続人が皆で話し合い(遺産分割協議)、納得していればその配分は法定相続分に優先します。
仮に亡くなった方の配偶者以外の相続人が恣意的に配分を決めてしまった場合、配偶者はその後の生活に重要な影響が出てくる可能性があります。
そのようなケースを想定して、法律では、相続人が当然に取得できるものとして最低限度の相続分を保証しています(これを遺留分と言います)。
つまり法定相続分は配偶者やその子供を保護する機能があるといえます。
遺留分が侵害されているような相続の場合には、侵害されている相続人は他の相続人などに侵害額を請求することができます。
侵害額を請求する等のトラブルが発生しないように、遺産分割協議を行ったり遺言を残しておくことが大切です。