税金に詳しくない方でも、一度はどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか。この贈与の仕組みを「暦年課税制度」といいます。この暦年課税制度を利用して、相続財産を生前に子どもや孫にたちに移転していけば、将来の相続税負担を減少させることができます。
しかし、2020年12月に令和3年度税制改正大綱が発表され、相続税節税対策の王道ともいえる暦年課税のあり方について抜本的な見直しが行われる可能性が示唆されました。具体的には、下記のような文章が記載されました。
端的に言えば、
「富裕層にとって有利な暦年課税制度について制限を加えるか、そもそも制度自体を廃止する方向で検討が進められている」
ということです。
それでは、諸外国では、財産を生前贈与についてはどのように取り扱われているのでしょうか?実は、諸外国では、生前に財産を譲るのか、それとも、死後に相続で譲るのかという、「財産を譲るタイミング」に関わらず、一定期間の財産移転に関して累積して課税するなどしており、現行の日本の制度のように、生前贈与による税負担の回避を防止する仕組みが構築されています。
アメリカ・イギリス
亡くなった時点での財産と過去に譲り受けたすべての贈与額の合計額が相続税の対象になります。(一生累積課税)
ドイツ・フランス
亡くなった時点での財産と、亡くなる前の一定期間内(ドイツ10年・フランス15年)に譲り受けた贈与額の合計額が相続税の対象になります。(一定期間累積課税)
日本でも諸外国のように相続税と贈与税を等しく扱い、意図的な税負担の回避が行われないように、相続税と贈与税を一体化される可能性があります。
相続税と贈与税が一体化されると、生前贈与で財産を譲り受けた人と、相続で財産を譲り受けた人とで、税額の差が無くなる可能性があります。つまり、暦年課税制度を利用した生前贈与が相続税の節税対策として機能しなくなる可能性があるということです。
具体的にどのような課税制度になるか、いつから新制度が適用されるのかはまだ公表されていませんが、早ければ令和4年度から新しい制度に切り替わる可能性も考えられます。これまで暦年課税贈与を繰り返していた方は、令和3年の贈与は思い切って例年より多めに贈与してみるのもありかもしれません。